相加相乗平均の不等式の次にメジャーな不等式であるコーシー・シュワルツの不等式。ここでは、コーシー・シュワルツの不等式を使った例題を紹介します。
ここでは、コーシー・シュワルツの不等式を使って計算してみます。
① \( \frac{1}{x}+\frac{9}{y}=1 \) のとき、\( x+y \) の最小値を求めよ
コーシー・シュワルツの不等式より、
\begin{eqnarray}
\left( \frac{1}{x} + \frac{9}{y} \right) ( x+y ) & = & \left\{ \left( \frac{1}{\sqrt{x}} \right)^2 + \left( \frac{3}{\sqrt{y}} \right)^2 \right\} \left\{ (\sqrt{x})^2+(\sqrt{y})^2 \right\} \\
& \ge & \left( \frac{1}{\sqrt{x}} \cdot \sqrt{x} + \frac{3}{\sqrt{y}} \cdot \sqrt{y} \right)^2 \\
& = & (1+3)^2 = 16 \\
\end{eqnarray}
ここで、\( \frac{1}{x}+\frac{9}{y}=1\cdots \)① だから、
$$ x+y \ge 16$$
等号が成立する場合を考える。
\begin{eqnarray}
\frac{1}{\sqrt{x}} : \frac{3}{\sqrt{y}} & = & \sqrt{x} : \sqrt{y} \\
\sqrt{y} : 3\sqrt{x} & = & \sqrt{x} : \sqrt{y} \ (∵左辺に\sqrt{xy}をかける)\\
∴y & = & 3x \cdots ②
\end{eqnarray}
①に②を代入すると、
\begin{equation}
\frac{1}{x}+\frac{9}{3x}=1 \\
\frac{4}{x}=1 \\
x=4 \\
②より、y=3 \times 4 = 12
\end{equation}
以上から、\( (x,y)=(4,12) \) のとき、\( x+y \) の最小値は \( 16 \)
② \( x^2+y^2+z^2=4 \) のとき、\( x+4y+4z \) の最大値を求めよ
コーシー・シュワルツの不等式より、
\begin{eqnarray}
( x^2+y^2+z^2 )( 1^2+4^2+4^2) & \ge & (1 \cdot x + 4 \cdot y + 4\cdot z )^2 \\
( x+4y+4z )^2 & \le & 33 ( x^2+y^2+z^2 ) \\
( x+4y+4z )^2 & \le & 33 \times 4 \\
∴x+4y+4z & \le & 2 \sqrt{33}
\end{eqnarray}
ここで等号成立を考える
\begin{equation}
\frac{x}{1}=\frac{y}{4}=\frac{z}{4}=k \ (k \gt 0) とおくと \\
x=k,\ y=4k,\ z=4k \cdots ①
\end{equation}
\( x^2+y^2+z^2=4 \) に①を代入すると、
\begin{equation}
k^2 + (4k)^2 + (4k)^2 = 4 \\
33k^2 = 4 \\
k \gt 0 だから
k = \frac{2}{\sqrt{33}} \\
①より、x=\frac{2}{\sqrt{33}},\ y=\frac{8}{\sqrt{33}},\ z=\frac{8}{\sqrt{33}}
\end{equation}
以上から、\( (x,y,z)=(\frac{2}{\sqrt{33}},\frac{8}{\sqrt{33}},\frac{8}{\sqrt{33}}) \) のとき、\( x+4y+4z \) の最大値は \( 2 \sqrt{33} \)
③ \( x+y=1 \) のとき、\( \frac{x^5+y^5}{x^3+y^3} \) の最小値を求めよ
コーシー・シュワルツの不等式より、
\begin{array}{cl}
(x^5+y^5)(x+y) \ge (x^3+y^3)^2 & \\
∴x^5+y^5 \ge (x^3+y^3)^2 & (等号成立はx=y) \cdots ① \\[10pt]
(x^3+y^3)(x+y)\ge (x^2+y^2)^2 & \\
∴x^3+y^3 \ge (x^2+y^2)^2 & (等号成立はx=y) \cdots ② \\[10pt]
(x^2+y^2)(1^2+1^2) \ge (x+y)^2 & \\
2 (x^2+y^2) \ge 1^2 & \\
∴x^2+y^2 \ge \frac{1}{2} & (等号成立はx=y) \cdots ③
\end{array}
だから、
\begin{eqnarray}
\frac{x^5+y^5}{x^3+y^3} & \ge & \frac{(x^3+y^3)^2}{x^3+y^3} & (∵①) \\
& = & x^3+y^3 & \\
& \ge & ( x^2+y^2 )^2 & (∵②) \\
& \ge & \left( \frac{1}{2} \right)^2 & (∵③) \\
& = & \frac{1}{4}
\end{eqnarray}
ここで等号成立を考える。\( x+y=1 \) に \( x=y \) を代入して計算すると、\( x=y=\frac{1}{2} \) となる。
以上より、\( (x,y) = ( \frac{1}{2},\frac{1}{2} ) \) のとき、\( \frac{x^5+y^5}{x^3+y^3} \) の最小値は \( \frac{1}{4} \)。